2LDKのお姫様

「紺野はアイスミルクで良いよね」


「そうアイスミルク。うんと甘くして」


どうやら紺野はここの常連らしい。何故なら目の前のメニューに見向きもしないからだ。


少しうらやましい。


「あんたはブレンドで良いよね」


「ああ、お願いします」


あんた、か……


まあ仕方無い。


「はい、どうぞ」


そんなことを考えるうちに香坂はもう用意してしまった。


「ありがとう」


紺野は嬉しそうに冷たいグラスを受け取った。俺も少し遅れて熱いカップを受け取った。


「いただきます」


ゆっくりとカップを近付ける。


珈琲の良い香り。


「美味い……」


無意識にそう口ずさんでしまうくらい、珈琲が美味しかった。


「でしょ。香坂ちゃんのいれた珈琲は天下一品なんだから」


「そうだな、香坂、美味いよ」


「ど、どうも」


いきなり大が目を輝かせて褒めるので、香坂は少し面食らってしまった。


「アイスミルクも甘くて美味しいよ」


「どうも」


香坂はそういうと奥に入って行き、新聞紙を持って帰って来た。


「新聞紙……」