2LDKのお姫様

大学から香坂の家まではチャリで約15分程度の、わりかし近い閑静な住宅街にあった。


もちろんカフェにつくまで、俺と香坂の会話は1つもなかった。


「着いたよ」


カフェは少し小さめだが、テラス席もあって外観はなかなかである。


「へぇ、結構お洒落なカフェだな」


「当たり前だよ。結構人気なんだよ」


確かに人気がありそうな雰囲気は解る。つけ加えるとすれば、特に女子に、という事だけだ。


「入って」


香坂は裏口から招き入れてくれた。


どうやらまだこの時間はOPENしてないらしく、表口は閉めてあるらしい。


─ Dinner 18:30〜 ─


という看板が出ていたから、あと3時間近くある。


香坂は俺と紺野をカウンターに座らせ、慣れた手つきで準備を始めている。


内装も随分凝ってある。特にカウンター席の椅子の座り心地は意外に良かった。


カウンターの奥には珈琲やアルコールの類いが色とりどりに並んでいる。


「やっぱりカフェって良い匂いがするよね」


確かにこのかすかに漂う珈琲の香りは俺も好きだ。


「そうだな」