「ねえ、このお店どこにあるか知らない」
良く晴れなかった昼下がり、久しぶりとは到底言えないゼミの会合の為に、大は大学へ出向いていた。
「あぁ、確か市役所の方じゃなかったかな」
土曜日の午後に呼び出されたゼミ生たちの顔も、全く晴れなかった昼下がりだった。
「へー、大くん意外に詳しいんだね」
紺野の戯言。それはいつも唐突だ。
今日は何故かカフェを探しているらしく、皆に場所を聞き回っているのだ。
「バイト先がちかいんだよ」
ゼミで知り合いになった面々も多いのだが、このゼミ会合という名目上だけの集まりが、実は今やただの座談会になってしまっていることには誰も知らないだろう。
「へぇ、市役所の近くでもバイトしてるんだ。それは初耳だよ」
カフェ情報雑誌を見ながら自棄にはしゃいでいるのこいつはゼミとは言え、決して休日には会いたくない変態人間の1人だ。
どことなく雰囲気がホノカ先輩に似ていて、学食や生協で鉢合わせするのだけを日々必死に避けてきた。
鉢合わせにでもなれば、最悪自主休講、良くて飯をおごるはめになる。
「別に俺のバイトをなんで関係無いでしょ、今は」
とにかく話の流れは変えておきたい。
じゃないとすぐに時給やら、経済的な話になってしまうからだ。



