「最初だけ……」
『そう。最初だけ……』
やっと顔をホノカから背ける。
「まあ、別に良いけどさ。いくら彼氏だからって、安易に女の子の部屋に若い男の子を入れるのは良くないよ。それだけ」
それだけ言って、ホノカは奥に下がって行った。
『そのくらい解ってるわよ』
男の子の前で平気でノーブラになる人には言われたくない、とシオリは思った。
それだけ呟いて、シオリもキッチンの奥に下がる。
昨日からしゅいろはいない。
朝食を食べ終わると、直ぐにまたホノカは、リビングのソファーによこになる。
「そういえばしゅいろは」
奥からホノカの声が響く。
『合宿らしいわよ』
「合宿……」
『そう。勉強合宿だとか』
「勉強……」
どうやらしゅいろはお勉強を学校側から強いられているらしい。
「じゃあ大くんは」
『大くんは明後日までは家にいるって。八連勤だったから疲れたって言ってたわ』
大は今日は暇らしい。
「じゃあその九連勤を終えた彼氏を呼んできてよ、私は暇なんだから」
『駄目よ……過労死する』
ホノカはお姫様気質で周りの人間の苦労を全く気にしないので、シオリも彼も随分手を焼いている。
『少しは周りに目を向けたら』
ホノカの暇に付き合うのがどれほど大変かを、シオリはよく知っている。
「良いのよ。先輩が呼んでるんだから。特権よ」
『…………うん……』
結局一時間もしないうちに、大はやってきていた。
そして仕方なくといった形で今はホノカの相手をしている。
しかしシオリが心配なのは、ホノカの横暴さだけでは無い。



