「本当に、よく寝てるわ……」
ホノカはこっそりとシオリの部屋に潜り込み、天使の寝顔をご覧ずる。
「疲れてたんじゃないですか、ベッドに入ったら直ぐに寝ましたよ」
「ふーん……」
得意気な大の返答に、ホノカは何か蔑むような目線を向けた。
「何ですか?」
「いや、何だか大くんがシオリを手懐けてるような気がして、いい気分じゃない。」
ホノカはシオリに向ける微笑みとは裏腹に、大にはキツい言葉をバンバン浴びせる。
「ま、シオリは私のモノなんだから、大事にしてよね。絶対よ」
「嫌われてないなら良いんですけど」
焦げ茶色のフローリングの片隅に白いベッドがある。
人はそれを愛の巣と呼び、シオリはそれを地獄だと呼ぶ。
翌朝……
「昨日はよく眠れたみたいね」
可愛らしいミニスカートを身に付けた少女が話しかけてきた。
『うん……』
キッチンでホノカとシオリが出くわしたのだ。
「やっぱり、大くんが来ると違うわね。」
『ぅん……』
「つかれて眠るなんて、さぞかし熱い夜だったんでしょう」
ホノカがグイグイとシオリに詰め寄る。
『……何の事かしら……』
いつもなら顔を真っ赤に染める所だが、珍しく素知らぬ顔でホノカを振り切る。
「本当に、でも大くんと一緒に寝てたんでしょ」
『最初だけよ……最初だけ……』
だんだん赤くなってきた。
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