2LDKのお姫様

「シオリさ、普段大くんと寝る時髪解いてるんじゃない」



『うん……』



確かに、夜中。彼の部屋を訪れる時には決まって髪は解いて行く。



何せ、それがOKのサインだからだ。



「やっぱり。大くんシオリが髪結んでたから、何も感じなかったんだよ」



ホノカ曰わく、大はシオリが髪を解いているならやる気満々だが、髪を結んでいるシオリには、何にも感じる事が無く、ただ女が横にいるだけだと思っているんだ、と言うことらしい。



「大くんはさ、やっぱり髪は解いてる方が好きなのさ」



『そんな、嘘よ……』



思わず口が尖った。



「なんで嘘なの」



『だって……別に誉められたこと無いのよ……』



髪のことなんて、何も言われたことが無い。



「誉めるかは、まあよくは解らないけど、勿体無いよ」



『何が』



珍しいホノカの強気な口調に、自然と背筋が伸びる。



「シオリはさ。前から恋とか疎いからさ。お化粧とか、オシャレとか、あんまりしてなかったでしょ」



『うん……』



シオリはゆっくりと昔を思い出しながら頷く。



「でも肌と髪はいつも入念にケアしてたじゃない」



そういえば、一回……



お気に入りの洗顔石鹸が無くて。



夜中、高校の寮をこっそり抜け出したこともあった。










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