「心配しなくて大丈夫。ケーキの分くらいは出しますよ」
実は2人は自分たちでルールを作っていて、外食した時は必ず割り勘にしようと決めていたのだ。
一般的には、普通、男性の方が払うのが当たり前のように思われるが。
やはりシオリの方が年上であるため、年下の、しかも未だ学生の彼にタダでご馳走になるのは気が引けるらしい。
『いや、半分は払うんだけど…』
やはりいくら観光でも流石に勿体無い。
なんせ、ミルクティーが一杯
460円するお店だ。
ミルクティーなんてスーパーに行けば120円もしない。
しかもロイヤルだし。
「良いよ。せっかく来たんだから。食べよう」
ゆっくりと口を動かし、穏やかに話を進める。
『うん』
未だ少し迷いがあるような余韻はあったが、流石に彼女も彼に詰め寄られ、事をのんだらしい。
その後、あまりに2人が近づいて話していたので、ウェイトレスが品を運ぶのに随分と長い躊躇いがあったのは言うまでもない。
「ほら、すごくおいしい」
目つきが悪い彼が、ケーキを嬉しそうに食べる姿は中々……。
『うん……』
シオリは妙なくすぐったさに、人差し指で頬を掻きながら、小声でそう呟いた。
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