『ミルクティーを1つ。
 あと……コーヒー。』



久しぶりに遠出をした。
本当に、何年ぶりか。おそらく卒業旅行以来だから、もう3年近く経っている。



なかなか休みも無く、少し余裕が出たかなと思えば学校に泊まり込みだったり。



2連休があれば、正直それはゴールデンウイークくらいに嬉しいモノだった。



もちろん、今日は1人では無い。



「ご注文これで宜しいですか」



黒い服を着た声高のウェイトレスが注文を確認する。



「あと……チーズケーキと、フルーツパウンドケーキを1つずつお願いします。」



「かしこまりました。」



もちろん声の正体はシオリの暮らすマンションの、隣に住む彼なのだが。



『ケーキ食べるの?』



今日は珍しく、いつも優しい彼女の表情が、少し険しく見える。



何故ならここは喫茶店で、どうしても他より値段が高くつく為、自分で家計を切り盛りしている彼女には少し勿体無い気持ちが強かったのだ。



ウェイトレスの目があるので、大声では言えない。



そこで、こんなにも近くに寄ってコソコソとふたり話をしているのである。



左頬に流れた黒髪を、細い指が後ろの耳に隠す。





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