2LDKのお姫様

「お待たせいたしました。特製和風冷やし中華です」


届いた冷やし中華は、まあ見た目は普通の冷やし中華だった。


『美味しい……』


「ですね。でも……この海老、全然箸じゃ掴めないですよ」


珍しく大が海老ごときに手間取っている。


『ふふ。はい、私の取ってあげるわよ』


シオリは自分の皿に入っていた海老をフォークで取り、大にフォークごと渡した。


「ありがとうございます」


『海老好きだっけ』


「いや。ただ今日のこの海老はよく逃げるから、是非とも食べてみたくて」


そう言いながら海老と格闘し続ける。


シオリは、フォークで取れば良いと言いたかったが、そんな大の姿が新鮮で微笑みながらそれを見続けていた。


「ほんとによく逃げる海老ですよ」


皿には未だ二匹の海老が残っている。


『そうね。逃げるのが上手い。どこかの誰かさんたちによく似てるわ』


シオリはそういって、冷麦の中に隠れている海老を箸で掴み、口に入れた。


彼とは違い、シオリは海老を簡単に、冷麦の中から捕まえることが出来たのだ。