2LDKのお姫様

「あ、冷やし中華やってるらしいですよ」


言うがままに近くのファミレスに来ていた二人は、早くもMENUを見ていた。


この寒い時期にサマーフェアをやっているとは、珍しい所だ。


『冷やし中華より湯麺くらいで良いわ』


「いや、せっかくだから食べましょう」


『そうね……』


大の微笑みについ押されてしまう。随分と彼に弱くなっているんだ。


「お客様、こちら当店サービスで冷やし中華の麺が中華麺と冷麦から選べますが、どちらにしますか」


冷麦なら特製和風冷やし中華になるらしい。


「冷麦で和風中華なんて少し変ですよね」


『そうね』


「冷麦好きですか」


『………』


黙り込むシオリ。


『私、冷麦って知らないし食べたことも無いの』


「へぇ、意外ですね。結構美味しいですよ」


『そう』


冷麦を知らないシオリは少し恥ずかしそうに、額にかかる髪を掻き分けた。


「今日の髪型珍しいですね」


『ああ……これね』


今日は少し雰囲気が違うと思っていたのだが、何かと思えば髪型がいつもと違うのだ。


『ホノカにね前髪を切ってもらっていたら、あの子失敗してね』


「ああ……」


シオリが機嫌が悪かった理由がやっとわかった。