2LDKのお姫様

『…………』


しびれを切らすという表現は良くない。しかし、それ以外の表現など存在しないくらい……


『早く来ないとどういう事になるかわかってるの』


シオリの声は恐ろしかった。


「いやあ、寝てた。よく寝た」


慌てて出てきたホノカの顔は焦りに満ちている。


「ほ、ほらホノカ先輩、早く帰りましょう」


大でもこの事態をおさえることは不可能だ。


明らかに大の手にはおえない。確実にそうだろう。


『しゅいろは何してるの』


「すぐに呼んでまいります」


ホノカは物凄い速さで奥へ駈けていった。


「シオリさん、帰りにどこか寄っていきましょうか」


『何か用でもあるの』


まだ恐ろしい。


「ごはんでも食べて帰りませんか」


ごはんと聞いた瞬間、ぐぅとシオリのお腹の虫が鳴いた。


『そ……そうね。そこまで言うなら』


シオリも不意の羞恥を隠す場所が無い所為か、断ることが出来なかった。


「よし、帰ろう」


焦って出て来たしゅいろを車に乗せて、大は車をゆっくりと、まああの雨の街へ滑り出した。