2LDKのお姫様

翌朝に機嫌が悪そうに、眉間に皺を寄せながら本を読む彼女がダイニングのテーブルに見えた。


『………』


実に近寄りがたい。


朝早くから目が覚めた彼もなかなか近付けずにいた。


「ずっとそんなにしてたら皺になりますよ」とはなかなか言えない雰囲気だ。


昨日からまあ機嫌というよりは具合が良くなさそうだが、やはり今は機嫌の方が悪そうに思う。


「珈琲でも飲みますか」


とりあえず何かきっかけを作らなくては。


『………』


むっとこちらを睨むような視線が貫く。


「珈琲、いれるね」


あまりの冷たい視線に心が折れそうになる。いや、折れた。


「はぁ……」


安そうな鍋にお湯を沸かし、棚からマグカップを取出す。その手はどうも覚束ない。


珈琲の粉を上手く入れられないのはいつ以来だろう。


大学の合格発表以来か。