2LDKのお姫様

いや考え方を変えてみよう。彼がもっと優しかったらどうだろう。


もちろん彼は今でも充分優しい。それでも、もっと優しくて私を。


いや、これは私の勝手な考えだ。ああ、自分がいやになる。


もう眠りたい。


「ただいま、シオリさん」


『……大くん』


「随分疲れてるみたいですね」


『え……』


気付くと、というより我に帰ってみると料理を作ろうとしていたはずが、どうやらキッチンで居眠りしていたらしい。


炊飯器の蓋も冷蔵庫も開けたままにして、まな板の上には切り掛けの野菜がごろごろと眠っている。


『ごめんなさい、すぐにご飯作るから。少し待ってて』


咄嗟に立ち上がり、解けかけていたエプロンのリボンを結び直す。


「良いですよ。あの二人はいないんでしょ」


『うん……』


「何か頼みますよ」


『うん……』


いや駄目。さっきまであんなに…。


「おごりますよ、今日は給料日だったので」