翌朝
『あれ、ごはん出来てる……』
とうとうシオリにも、寝過ごす日が来てしまった。
流石にふざけていたホノカも大の不安に本腰を入れ始めた。
「やっぱり肉体関係だって。どのくらい抱いてないの」
「なんで先輩に教えなくちゃいけないんすか。それにそんなこと言ったりしたら、シオリさんに俺が殺されますよ」
まだ眠たそうな表情を浮かべたまま洗面所へ向かったシオリをよそに、こそこそど物議を交わす。
「大丈夫、そのくらい。別にバラしゃしないんだからさ」
「本当ですか」
心配だ。凄く心配だ。この人だから心配だ。
「今日見て解ったでしょ。シオリだって気が弛むこともあるのよ」
「また人間ですからね」
勿論、彼女は出来た人間であるため、おそらく、すぐに戻ろうと思えばいつもの自分に戻れる人であろう。
しかし、今日はそんな彼女を、どこを探しても浮べることが出来ない。そんな雰囲気なのだ。
一方。ぐたぐだと歯磨きをしていた彼女も。
『ああ……』
だらしない髪と、ぎこちない服装。しわくちゃのままのベッド。洗い終わっていない食器たち。
もう今は何も思い出したくない。といった具合である。
「ちょっと、シオリ来たから。ほら」
ホノカに押されるようにして、慌ててキッチンへ戻った。



