「ただいま」
午後3時
彼がやって来た。
すると、しゅいろは直ぐに彼の腕に抱きついて、彼の影に隠れながらシオリを睨む。
「どうかした?」
「シオリ先生。私をいじめるの」
これにはシオリも呆れる。
『バカな事しないで、早く戻りなさいよ』
ちらかった教科書を、疲れた顔を浮かべながら纏めなおす。
シオリは珍しく機嫌が悪そうだった。
何故なら……
いつもなら彼が訪ねて来た時は誰よりも先に、愛しき彼を満たしようもできない幸せという名の優しさで迎えていた。
しかし今日はそれが無いからだ。
「シオリ先生……今日怖いの」
しゅいろも珍しく、減らず口が減っている。
少し大も気になっていた。
『もう今日は良いわ。私は疲れたから、少し休んでくる』
シオリは少し不機嫌そうな顔をして立ち上がった。
玄関に取り残されるように、二人は固まったままだった。



