──パタン。 しばらくして、玄関からドアの閉まる音が聞こえてきた。 うとうとしかけていたあたしは、ハッと顔を上げて跳ね起きた。 「……陸!今までどこ行って…」 言いかけて、あたしは言葉を飲み込んだ。 ──陸の顔が、真剣だったから。 というより、何か思い詰めたような、考え込んでいるような、とにかくいつもの陸じゃないことは確か。 「…陸?」 恐る恐る歩み寄って、陸の頬に触れる。 ──冷たい。 ……何か、あったの?