気がつけば、隣で朱美ちゃんも口ずさんでいる。



「何処の国の歌?」



「分からないわね。私もアイツと…なんでもないわ。」



アイツと何よ。



私は朱美ちゃんのシャープな横顔を睨んだ。



ふうっと煙を噴く姿はやっぱり綺麗で、どこかミステリアスな印象の顔立ちだ。



「伊織チャン、そんなに見られたら穴が開くわ。」



「あ、ゴメン…。」



朱美ちゃんはケラケラ笑いながら煙草を灰皿に捩込みカウンターのカクテルを飲み干した。