奄美大島。



優しい潮の香りが漂う海岸沿いでとある小さなバーが経営されている。



「オーナーっ澤木さんったら!開店間に合わないよ!」



アルバイトのバーテンダー、レンジがパタパタ準備を始める。



私は、無表情でグラスを磨いていた。



あの日から三年の月日が経ち、私は今、この穏やかな島でバーを経営していた。



あの日社長は私をこの島まで何時間もかけて車で連れて来て、霧島の、父方の祖母のツネさんの家に私を預けた。



ツネさんは、何も聞かず私を置いてくれた。