【完】ペテン師との甘い夜

SPみたいな男に玄関まで案内され和式の引き戸を開く。



中に進むとシュッシュッと音がしている。



襖を開くと還暦くらいの男が炭を硯で摩っていた。



「御祖父様、お久しぶりです。」



「勇治が自らここにくるとは、いかなる御用か?」



厳格な武士を思わせるような雰囲気の佐倉典之。



「簡単な話です。この男と俺の戸籍を入れ換えて下さい。」



勇治は抑揚のない声色で言った。



佐倉典之の手が止まる。



二人はお互い、闇を放つように見つめ合っていた。