朱美ちゃんから連絡があるまで、私は仕事もろくに手が付かずそわそわしてしまう。



社会人としては、ホントに最低。



だけどやっぱり気になる。



朱美ちゃんは何かに感づいたらしいが、私には何のことやらさっぱり分からない。



だから、早く真相を知りたい。



そんな思いを胸に定時まで業務を過ごし、会社のビルを出ると、見覚えのある黒いベンツ。



「やぁ、伊織。」



青い瞳は翡翠のように透き通って不思議な光を帯びている。



「随分、悩ましい顔をしているんだね。」



「貴方のせいよ。」



私はセキの顔を瞳で真っ直ぐ捕らえた。