それでいいのよ。



私には、愛情なんて不要な感情なんだから。



そんな感情はいつか私を滅ぼす。



私は、私の母と父みたいにはなりたくない。



だから、きっと手に入らなくていいんだわ…。



パンツのポケットから煙草を取り出し、そっと一本口に持って行った。



「苦い…。」



そう、とても苦かった。



伊織チャンは私の気も知らずにカクテルを飲んでる。



その愁いを帯びた美しい横顔を瞳に焼き付けるように、そっと、私は彼女を見つめた。