分かったことは、私がセキに対して特別な気持ちを抱いてること。



顔を思い出すだけで、支配されそう。



あの青い瞳が、私の気持ちを吸い寄せて離さないんだ。



「伊織チャンも大変な奴に惚れたもんだ。」



グラスの中をスプーンで混ぜながら朱美ちゃんが呟いた。



「そうね…あんな謎だらけのペテン師に。」



はぁ、と心地良い溜息をつく。



「どうせなら私に…。」



ボソッと朱美ちゃんが何かを言ったように聞こえる。



「何?朱美ちゃん?」



「別に。朱美ちゃんの独り言よ。」



そう言って笑った顔はやっぱり綺麗だった。