【完】ペテン師との甘い夜

「伊織、俺に隠し事なんて、出来ると思ってる?」



相変わらず美しくも怪しい光を放つセキの笑顔。



全てを支配されそうになってしまう。



けど今日は、今日だけは…そういう訳には行かないよね。



私は頭の中で覚悟を決め、自分から、セキの薄い唇へ顔を近付けた。



ひゅうっと朱美ちゃんの口笛が意識の片隅に聞こえる。



セキは最初こそ固まっていたものの、そのうち私の肩をすっと抱き寄せた。



私は勇気を振り絞りそっと、セキのサラサラした髪の毛に頭部を寄せるようにして絡めていった。