いつものお店に足を運ぶ。



−昨日の、国見社長の唇の感触が忘れられないまま。



重たいドアを開きいつものカウンターに着く。



「いーおりチャン?」



頭に掛かる低い声。



顔を上げると朱美ちゃんが微笑んでいた。



「ねぇ、伊織チャン、私ね、昨日セキ達と話したの。」



「えっ?」



「それでね、私、どっちが偽物か分かる方法、思い付いたの。」



自信ありげな朱美ちゃんの声。



「ホント?それ、どうするの?」



私は食いつくように朱美ちゃんに顔を近づけた。