「……そういえば、ルーディーさんも先生もあの野郎も名前で呼びやがったな」


汽車の中、物思いにふけっていたリセはふとそんな事を思い出す。

その時はバタバタしていたり、久々の仕事に張り切っていたから分からなかったが。

彼は名前で呼ばれる事を苦手としている。名前が女の子のような名前だからだ。

だからリセ自身は自分の事を名字か“ディー”と呼んで貰うように言っているのだが、

小さな子供や親しい間柄や彼自身を皮肉る人間はそれを聞かない。

“リセ”と呼ばれる度に、すぐに名前を訂正しろとムキになるが、

それでも取り合ってくれない事がリセの悩みの一つでもある。


「帰ったら言わないと、な……それにしても……」

依頼の紙を見ながらリセはまた溜息を吐いた。

そこに書かれているのは報酬や場所の事だけではない。

リセがこれから“解放する”人間の事も書かれていたのだ。


「僕とそんなに違わない歳の男じゃないか……
もしこれが神の気まぐれでの発動だったら、ふざけすぎている」