その言葉に対して特に何も言わずに、

男はリセの目と鼻の先まで顔を近づけ、それからようやく手短に用件を言う。


「安心しろ。命を奪おうとまでは思わない。二つ頼みがある。
一つ、ある人間の呪いを取り除いて貰いたい。
二つ、今からお前の行動は俺達が監視する。ウィルドが死ぬまで、この家に居続けて貰う」


まるでそれは、救う事への決意を硬く持ったリセの反応を楽しむかのようにも見える発言であった。

助けたい相手がいると言う箇所は良いとしても、その次の言葉に問題があった。


「ふざけるな! ウィルドを見殺しにしろと言うのか?」

「ああ、そうさ? あの兄弟が苦しむ機会なんて滅多にないし」


悪びれる事もなく言ってのける男に、沸々とわき出る苛立ちを、リセは抑えきる事も出来ず、

手錠で繋がれていない片手で男の頬を叩いた。

しかしすぐに仕返しされ、リセは頬を思い切り殴られてしまう。