「あ、これは……」


セレンの目に飛び込んだのは、キラリと光る物体。

拾ってみればそれはリセが普段から身に付けているものではないか。

それを彼が大切にしている事も、セレンは知っていた。

その大切にしているものが此処に落ちている。と言う事は……。


「女将さぁぁぁぁん!! おおお、おまわりさん呼んで下さい! りり、リセ君が、リセ君が……」


 セレンはひどく動揺し、その顔色は周りが心配するほどに真っ青だった。





「……ただ何処かに外出しているだけと言うのは考えられないのかい?」


リセの失踪疑惑は(実際は本当に失踪しているのだが、まだ確定ではない)、

瞬く間に小さな町であるラピアス全域に広まった。

慌てるセレンに言われるがまま、宿の女将は警察を呼び、現在彼女は事情聴取を受けている。

その宿の周りには囲むようにして、人が集まっていた。

解放者であるリセがいなくなっただけではない。

失踪が事実ならば、それはラピアスの歴史の中で初めての出来事でもあるからである。