今宵、黒蝶を溶かして。

「光莉以外は」

校門前が、静まり返った。

光莉の顔が一気に熱くなる。

「と、冬真くん……! 学校でそういうこと言わないで!」

「なぜだ」

「恥ずかしいから!」

「俺は、誰に知られても構わない」

冬真は光莉だけを見つめる。

「お前が俺の特別だと、全員に分からせたい」

その言葉に、幹部たちの表情も変わった。

玲央は光莉の前に立つ男子生徒を静かに見つめ、迅は周囲を睨む。
伊織は笑顔のまま、光莉に近づこうとする生徒たちを観察していた。

蓮司が小さくため息をつく。

「……光莉ちゃん、今日から大変だね」

「え?」

「黒蝶の総長と幹部全員に守られてるから」

冬真が光莉の手を握る。

「放課後、迎えに来る」

「みんなで?」

「当然だ」

「授業が終わるまで、校門で待ってるからな!」

迅が手を上げる。

「俺、光莉ちゃんの好きなもの買ってくるよ」

伊織が微笑む。

「帰り道は俺が危険な場所を確認しておく」

玲央が続ける。

「俺は担任に話を――」

「待って、みんな!」

光莉が慌てて両手を振る。

けれど、誰も止まらなかった。

黒蝶のメンバーは、光莉をひとりにしない。

その過保護すぎる愛情は、学校中に知れ渡ることになる。

そして冬真は、光莉の耳元で静かに囁いた。

「今日も、俺のそばにいろ」

「……うん」

光莉が小さく頷くと、冬真は満足そうに目を細めた。

女嫌いの総長が、ただひとりの少女にだけ甘くなる。

その噂は、この日から一気に学校中へ広がっていった。