口調はどこか怒っているように聞こえるのに、ちっとも怖くないのは、きっと、彼女の顔が赤いからだろう。

薄暗いし、斜めから見ただけだから、定かではない。
もしかしたら、目の錯覚かも。


「だからまた、迎えに来なさいっ!」


けれど、英は何だかそれが嬉しくて、口許に弧を描きながら、控え目に笑った。


考えてみれば、女子と一緒に帰るのも、こんなふうに初々しい気持ちになるのも、初めてだったような気がする。


英は、栖栗の後ろを歩きながら空を仰いだ。


真っ白な月がぽっかり浮かぶ空には、あと数分もすれば、星たちが瞬き始める。