その溺愛、予想外につき。

その時だった。

「はいはい、顔合わせ終わり」

るかが明るい声で割って入ってくる。
さりげなく私の隣に立ち、そのまま肩が触れそうなくらいの距離に収まった。

「この子、今日はもういっぱいいっぱいなんだから、詰めすぎないで」

何気ない言い方。
でも、少しだけ守るみたいな響きがあった。

私は思わずるかを見る。
るかは気づかないふりみたいに笑っている。

あさひがじとっとした目を向ける。

「なにそのかばい方」

「だって事実じゃん」

「るか、おまえ距離近くない?」

その一言に、私はどきっとする。
たしかに近い。
近いけど、それを他の人に指摘されると余計に意識してしまう。

るかはけろっとした顔で言った。

「そう?」

そうだよ。
心の中で思ったのに、口には出せなかった。

れんはそんなやりとりを静かに見ていたけれど、不意に私へ視線を向けた。

「無理して喋らなくていい」

「え……」

「まだ慣れてないだろ」

ぶっきらぼうなのに、思ったより優しい。
私は少し戸惑いながらも、小さく頷いた。

「……うん」

「あ」

また素が出た。
慌てて口を閉じると、るかが吹き出しそうになる。
あさひも目を丸くしたあと、にやっと笑った。

「今の、素?」

「ちが……」

否定しようとして止まる。
変に誤魔化す方が怪しいかもしれない。

空気が一瞬だけ止まりかけた、その時。

「キャラ変だよ」

るかがさらっと言った。

みんなの視線がるかに集まる。

るかはまったく動じず、笑顔のまま続けた。

「ほら、前の涼ってちょっと近寄りがたい感じあったじゃん。でも今回は、柔らかめ路線でいくのもありかなって」

「は?」

あさひが眉をひそめる。

「何その適当な設定」

「適当じゃないよ。新しい見せ方」

るかは平然としている。
その横顔を見ながら、私は何も言えなかった。

助けてくれた。
たぶん今、そういうことなんだと思う。

しおんがくすっと笑う。

「たしかに、少し雰囲気が変わったと思えば納得できるかも」

れんも小さく息をつく。

「急に全部同じには無理だろ」

あさひだけがまだ納得していなさそうだったけれど、真白さんが間に入った。

「今日は顔合わせだけ。細かいことはこれから合わせる」

その一言で、話はひとまずそこで終わった。

私は内心ほっとする。
でもその安心と同時に、るかの存在がまた大きくなっていくのを感じてしまった。

困った時に、するりと助けてくれる。
軽そうに見えるのに、ちゃんと見ていてくれる。

そんなの、意識しない方が無理だ。

「じゃあ最後に、並びだけ確認しよう」

黒崎さんの声で、みんながステージ用の立ち位置を意識して動き始める。