その溺愛、予想外につき。

「え」

「さっきはずっと頑張ってますって顔してた」

そんなふうに言われて、少しだけむっとする。

「頑張ってるし」

「うん。でも今は、ちょっとだけ力抜けてる」

るかの目が、じっと私を見ている。
冗談を言う時のきらきらした目じゃない。
もっと静かで、まっすぐな視線。

その視線に耐えきれなくて、私はそっと目を逸らした。

「……るかの前だと、調子狂う」

言ってから、はっとする。
今のは完全に素だった。

まずい。
慌てて口をつぐむと、るかは数秒きょとんとして、それからふっと笑った。

「へえ」

「……忘れて」

「やだ」

即答。
そんな軽い返事なのに、胸の奥が変にざわつく。

「なんで」

「なんか嬉しかったから」

その一言で、耳まで熱くなるのがわかった。

るかは壁にもたれていた背中を離して、私の正面に立つ。
逃げ道を塞ぐような距離ではない。
でも、十分近い。

「ねえ、緊張してる時って、どうしたら少し落ち着く?」

突然そんなことを聞かれて、私は戸惑う。

「……知らない」

「俺はね、人と喋る」

「るかはそうだろうね」

思わず返すと、るかは笑った。

「なにそれ」

「だって、るか、ずっと喋ってるし」

「ひどい」

言いながらも、全然傷ついた顔じゃない。
むしろ楽しそうだ。

るかは少しだけ身をかがめて、私の顔を覗き込んだ。