その溺愛、予想外につき。

「今後のこともあるから最初に言っておく。着替えは基本、ひとりでできるようになってもらう。でも今日は確認もあるから私がつく」

「……はい」

「恥ずかしがってる暇はない」

その言葉は厳しいけれど、必要なことだとわかる。
私は小さくうなずいた。

カーテンの中に入ると、さらに鼓動が速くなった。
準備されていたインナーと、仮の衣装。
白いシャツに、装飾のついたジャケット。
細身のパンツ。
どれも本当に、アイドルが着る服だ。

こんなのを私が着るなんて。

「早く」

外から真白さんの声がして、私はあわてて着替え始めた。

手が震えて、ボタンがうまく留められない。
ウィッグを崩さないように気をつけながら服を替えるのも難しくて、何度も息が詰まりそうになる。

なんとかインナーを整え、仮衣装を身につける。
だけど最後のジャケットを羽織ったところで、私は動けなくなった。

鏡代わりの小さな姿見に映る自分が、まだどこかちぐはぐだったからだ。

肩が少し余る。
胸元のラインも気になる。
男の子に見えるかと聞かれたら、まだ自信がない。

「終わった?」

真白さんの声に、私は小さく返事をした。

「……はい」

カーテンを少し開けると、真白さんがすぐに中へ入ってきた。
一目で全身を確認して、迷いなくジャケットの位置を直し、肩のラインにパッドを入れていく。

「腕を上げて」

「はい」

「声、もっと低く」

「……はい」

言われた通りにするたび、少しずつシルエットが変わる。
胸元も見え方を調整されて、鏡の中の違和感が少し減っていった。

「これなら遠目は誤魔化せる」

その一言に、少しだけ息をつく。

カーテンの外へ出ると、衣装スタッフさんたちが一斉にこちらを見た。

「わあ」

「さっきより全然いい」

「ちゃんと男の子っぽく見える」

その反応に、耳が熱くなる。

褒められているのか、誤魔化せていると言われているのか、よくわからない。
でも、とにかく少しは形になったらしい。

私はおそるおそる部屋の大きな鏡を見た。