放課後の旧校舎。誰もいないはずの図書室の片隅で、その少年は世界で一番無防備な顔をしていた。
「……ねえ、梨乃。もっとこっち来てよ」
制服のネクタイを少し緩め、梨乃の制服の裾をキュッと引っ張るのは、全校生徒が憧れる“学校の王子様”――橘琥珀だった。
学校では誰もが振り返る完璧な王子様。しかし、ふたりっきりになった途端、琥珀は梨乃にだけ甘ったるい声を出す。
「疲れた……。梨乃に触ってないと、なんか落ち着かない」
大きな体を小さく折りたたむようにして、琥珀は梨乃の肩にこつんと額を預けた。
ふたりが付き合い始めたのは、一ヶ月前のこと。
ずっと遠くから見つめるだけだった彼に、勇気を振り絞って想いを伝えたのは梨乃の方だった。
『好きです、琥珀くん!』
真っ直ぐな告白に、琥珀は驚いたような顔をした後、少し照れくさそうに笑って言った。
『俺も、ずっと梨乃のことが気になってた。……ねえ、これからは俺たち、内緒で付き合わない?』
噂になれば、ファンの女子たちに何言われるか分からない。お互いの平和(特に梨乃の平穏)のために、ふたりの交際は完全な「ヒミツ」になった。
学校では他人のふり。
だけど、放課後だけは梨乃の腕を独占する。
これは、梨乃だけが知っている琥珀の本当の姿だった。
「……ねえ、梨乃。もっとこっち来てよ」
制服のネクタイを少し緩め、梨乃の制服の裾をキュッと引っ張るのは、全校生徒が憧れる“学校の王子様”――橘琥珀だった。
学校では誰もが振り返る完璧な王子様。しかし、ふたりっきりになった途端、琥珀は梨乃にだけ甘ったるい声を出す。
「疲れた……。梨乃に触ってないと、なんか落ち着かない」
大きな体を小さく折りたたむようにして、琥珀は梨乃の肩にこつんと額を預けた。
ふたりが付き合い始めたのは、一ヶ月前のこと。
ずっと遠くから見つめるだけだった彼に、勇気を振り絞って想いを伝えたのは梨乃の方だった。
『好きです、琥珀くん!』
真っ直ぐな告白に、琥珀は驚いたような顔をした後、少し照れくさそうに笑って言った。
『俺も、ずっと梨乃のことが気になってた。……ねえ、これからは俺たち、内緒で付き合わない?』
噂になれば、ファンの女子たちに何言われるか分からない。お互いの平和(特に梨乃の平穏)のために、ふたりの交際は完全な「ヒミツ」になった。
学校では他人のふり。
だけど、放課後だけは梨乃の腕を独占する。
これは、梨乃だけが知っている琥珀の本当の姿だった。



