その花が咲く頃に【第一幕】

 屋敷に住まわせてもらい、早三日。
 相変わらず仕事はもらえず、毎日が不安で仕方なかった。
 そこで、白幸さんにある提案をしてみた。

「あの」
「なんでございましょう」
「家事の、手伝いは…、駄目でしょうか」
「手伝い、ですか」
「はい。それなら私が働いていることには、ならない、かと…」
「ふむ。それくらいならいいでしょう」
「ありがとうございます」
「でしたら、早速朝食作りのお手伝いをお願いしますね」
「はい。食事作りは村でもやっていました」
「それなら基礎はできますね。よかったです」

 みたこともない食材が沢山ある。けれど、白幸さんに教わって、丁寧に下処理を行った。
 何か仕事をしていると言う感覚だけが、存在意義を与えられた実感で安心できる。
 この時間だけで、たくさんのことを学ばせてもらった。
 肉が焼いても固くならない方法を知った時は、少し気分が上がった気がする。
 そうして着々と準備を進めていると、あっという間に完成した。

「お嬢様は飲み込みが早くていらっしゃいますね」
「い、いえ。こういうことだけをして育ったので」
「他には何を?」
「残飯処理から、糞尿処理、そして、稲作の労働、米の入った倉庫の監視など、ですね」
「…やはり真面ではありませんね」

 今白幸さんが何を言ったかはうまく聞き取れなかった。
 確かに何かを言ったと言う事実はわかった。

「お嬢様。私は旦那様達を起こして参ります。配膳も済んでいるので、ここでお待ちいただけますか?」
「かしこまりました」

 厨房は村の当主の家より広い。
 これが普通なのか。はたまたここが大きすぎるのか。よくわからないけれど、居心地は悪い。
 入り口に座り込んで、白幸さんが戻るのを待った。