終わった恋の、その後で。 〜プレイボーイな曲者御曹司は私にだけ奥手らしい〜

理央はせめて避けられる関係だけでも改善したいと考えていたが、流石に崇め奉られ注目を浴びる零士に対し、かつてのような距離感でブランクを詰めることなど出来なかった。

壁に耳あり障子に目あり、この会社の人間は耳聡い者が多い。

設計部を訪れる度に心を引き締め、自分の気持ちが周りにバレないよう極力いつも通り過ごしていた。

そんなマイナススタートの理央の立場は結局変わることなく、一年を過ぎたころ後輩の千春が零士の心を射止めた。

今となっては、ある意味納得だった。

零士はスパダリなどと言われているが、女性の感情に鈍いところがある。

それを分かっていつつも当時カッとなって破局したのだから、理央の性格の方にも問題があったわけで、二人の交際が始まったあと、千春のおかげで会話のなかった零士との関係も誤解が解けて今は友人に戻れている。

『俺の顔なんて見たくないと思ってた』という言葉と共に避けていたことを謝罪された時は、相変わらず鈍さは健在しているのだと実感したものだ。

そして理解した。

好きという気持だけでは駄目で、零士には、よく気づき包容力のある相手が相応しかったのだと。

千春は本当に他人の機微に聡く、よく気付く女性だ。それでいて変に擦れたところもなく純粋で、同じ営業部で仕事に対しても懸命な姿を見ているので好ましかった。

二人が付き合い始めた時は複雑な感情だったが、それでもいつしか純粋に二人が上手くいけばいいと感じられるようになっていた。