終わった恋の、その後で。 〜プレイボーイな曲者御曹司は私にだけ奥手らしい〜

分かった風な言い方をされているが、その通りなのだ。

自分の気性が荒いことを自覚している理央としては、外に出さないように余所行きの顔を常に張り付け、持ち帰った感情はだいたいその日のうちに部屋で一人涙と共に吐き出している。

伊佐美と酒を交わすようになってからは素直な感情をそこに落としていったので瞼が浮腫む日はなくなっていた。

「そうやって”俺はお前を分かってる~”みたいな言い方。モテそうですよね……伊佐美さんこそ、どうなんですか?」

千春との会話を聞いたあとも、伊佐美はまだずっと想い続けていると言っていた。

千春と零士の結婚式をどんな感情で見ていたのだろう。

想いというのは、告げても告げられなくても、自分で終わりを決めないと終わらない。

「俺か。そろそろ隙が生まれないかなぁと予断が許されない状況かな」

「そこまでいくと、凄いですね……」

結婚したというのにまだ粘るつもりかと、驚きを通り越して呆れた。

一方で、喉を冷やしながら落ちる酒が、理央を一つの答えに導いてゆく。

それほど終わらせたくない恋なのかと。

「私の涙は、感動と安心の涙ですよ」

理央は喉を鳴らして吐息を零したあと、歯列を覗かせた。

「二人の結婚を喜べてました。だからもう大丈夫なんで、私は先に一抜けしますね。負け犬座談会」

もう負け犬なんて自虐は終わりにしよう。

再会を運命のように感じることだって、しない。

初恋の未練ごと浚って欲しいと憧れた感情とも、さよならだ。

諦めの悪い伊佐美を目の前にした理央は、ある意味で潔いまでの一途さに呆れたと同時に、攫って欲しいでなくて自分が攫う気概を持つべきだったと気付いた。

ーー自分らしくない。

玉砕覚悟で行動するのが理央であって、想いを秘め続けるのは似合わない。

千春と零士が結婚式という一つの節目を迎えたのだから、伊佐美についていた浅ましい嘘も一区切りつけるべきだろう。
それに彼とは所属する会社が違えば立場も違う。

今日みたいな奇跡が続くとは限らないのだ。

理央は大きく息をついて、それから伊佐美を見つめた。

「実は零士への未練なんてとっくに消えてたんです」

「ん?」

「伊佐美さんが好きなので、嘘ついてました」

「は……」

「まぁ、そういう反応ですよね。すみません、小賢しいことして。でも伊佐美さんがうちの会社を辞めてから大義名分もなくなっちゃいましたし、この貴重な機会に言わせてください」

「待って、佐山」

「嫌です。伊佐美さんが誰を好きでもその気持ちごと包み込んで受け止めます。私じゃ駄目ですか?」