終わった恋の、その後で。 〜プレイボーイな曲者御曹司は私にだけ奥手らしい〜

――――東雲零士とは家が隣同士の漫画にありがちな幼馴染だった。

寡黙で読書家、そしてちょっと他人の感情に疎い零士を、いつも理央は腕を引いて外遊びに連れ回していた。

『大人しい男と、勝ち気な女』これもお馴染みで、成長と共に零士を意識し始めた理央は、これまたよくある流れで高校一年の春に告白し、見事彼女の座に収まった。

しかし“幼馴染の彼女”というのは物語だと何故か結ばれないのがお決まりだ。

現実は違うだろうと自分を奮い立たせていた理央だったが、しかしお約束のように付き合い始めて三か月を過ぎた頃、突如別れることとなった。

『理央とは友達の方がいいかもしれない。俺のこと、そんなに好きじゃないだろ?』

この時、零士が何をもってそう言ったのか理央にはよく理解出来なかった。

……いや、理解しようとしなかった。

理央の性格上、まず感じたのは怒りだ。

感情を否定されたことにムキになって「もう、いい」と別れたことはしっかり覚えている。

理央は零士が好きで、だからこそ玉砕も覚悟でこちらから告白したのに、恋愛感情を疑われれば馬鹿にしているのかと屈辱で身体がカッと熱くなった。

――だってそうだろう。『かも』などと委ねるような言い方はずるい。

当時の理央は、女として見れないなら、はっきり言えば良いとそう解釈していた。

そんな理央の憤りに対して零士は何か言いかけていたが、話し合いに取り合うことなど出来ず、お揃いで買ったキーホルダーを投げつけて自宅に帰り、その日はしくしくと一人涙した。

ひと月後、零士は親の都合で海外に引越していった。

きっともう会うことはないだろう。そんな風に感じていたが、しかし腐れ縁は今尚続いていたようで、理央の務める商空間デザインの統合制作会社グロウテックに零士は転職してきた。