「本当かよ?佐山はスパダリの俺より零士くんに惚れてるんだろ。信用出来ない言葉だね」
「本当ですって!憧れのスパダリは伊佐美さん、零士はスパダリじゃなくても好きなんで」
本気にされてない空気感に理央が眉を顰めると、伊佐美は頬杖をついて笑みを浮かべたあと吐息を零した。
「……いいねぇ。俺もそれぐらい想われてみたいよ」
片想いの相手を思い出したのだろうか。
珍しくどこか刹那げで、そこに混じっていたのは意外な表情だった。
――まるで拗ねた子供みたい。
しかしそれは一瞬にして消えてゆく。
「伊佐美さんの片想いはやっぱり成就しそうにないんですか?というかまさか人妻とかいいませんよね?」
道ならぬ恋なのかと疑ったが軽く首を振って否定された。
「独身女性だし、相変わらず俺はお呼びじゃないってだけだよ」
「それ本当に意外ですけど、あれですか。女遊びが激しいのバレてたとか」
お呼びでないとは、まるで社内でラベリングされている二枚目キャラの扱いそのものだ。尋ねると伊佐美は逡巡したのち含みのある笑みを溢した。
「かもな。でも昼間はあぁ言ったけど、ちゃんと清算してるから。この前目撃された相手が最後。今はわりと一途に想ってんだけどなぁ……もし上手くいかないとなると、お前が玉砕した時にでも俺を貰ってもらうしかないか」
急に指名され理央は笑った。
なんでそうなるのか、とは深く考えない。酒の席での軽口なのだから。
「嫌ですよ。私じゃ手に余りますって。あ、それよりこの店の座席部分、あえてフラットなの勝手がいいですよね」
クッションがずれる心配のない作りの座席に触れながら言えば伊佐美は「おい」と唇を尖らせる。
「酷いな。俺よりこのクッションに興味あるの?まぁでも、よく気付いた。それでいて絶妙だろ?テーブルの高さも」
そして話題は恋バナから店舗のディレクションへと完全に移ってゆく。
こんな風に始まった二人の時間は筆舌し難いほど心地よくて、苦い恋の悩みも日本酒と美味しい食事と共に喉の奥へ流れていった。
仕事のためになる話に耳を傾けたり、新たな協力会社の人間関係を共有したり、思い返せばこの時からちゃんと特別だったのだ。
それに気付いたのはもっと後のことだが。
「本当ですって!憧れのスパダリは伊佐美さん、零士はスパダリじゃなくても好きなんで」
本気にされてない空気感に理央が眉を顰めると、伊佐美は頬杖をついて笑みを浮かべたあと吐息を零した。
「……いいねぇ。俺もそれぐらい想われてみたいよ」
片想いの相手を思い出したのだろうか。
珍しくどこか刹那げで、そこに混じっていたのは意外な表情だった。
――まるで拗ねた子供みたい。
しかしそれは一瞬にして消えてゆく。
「伊佐美さんの片想いはやっぱり成就しそうにないんですか?というかまさか人妻とかいいませんよね?」
道ならぬ恋なのかと疑ったが軽く首を振って否定された。
「独身女性だし、相変わらず俺はお呼びじゃないってだけだよ」
「それ本当に意外ですけど、あれですか。女遊びが激しいのバレてたとか」
お呼びでないとは、まるで社内でラベリングされている二枚目キャラの扱いそのものだ。尋ねると伊佐美は逡巡したのち含みのある笑みを溢した。
「かもな。でも昼間はあぁ言ったけど、ちゃんと清算してるから。この前目撃された相手が最後。今はわりと一途に想ってんだけどなぁ……もし上手くいかないとなると、お前が玉砕した時にでも俺を貰ってもらうしかないか」
急に指名され理央は笑った。
なんでそうなるのか、とは深く考えない。酒の席での軽口なのだから。
「嫌ですよ。私じゃ手に余りますって。あ、それよりこの店の座席部分、あえてフラットなの勝手がいいですよね」
クッションがずれる心配のない作りの座席に触れながら言えば伊佐美は「おい」と唇を尖らせる。
「酷いな。俺よりこのクッションに興味あるの?まぁでも、よく気付いた。それでいて絶妙だろ?テーブルの高さも」
そして話題は恋バナから店舗のディレクションへと完全に移ってゆく。
こんな風に始まった二人の時間は筆舌し難いほど心地よくて、苦い恋の悩みも日本酒と美味しい食事と共に喉の奥へ流れていった。
仕事のためになる話に耳を傾けたり、新たな協力会社の人間関係を共有したり、思い返せばこの時からちゃんと特別だったのだ。
それに気付いたのはもっと後のことだが。



