初めて二人だけで入った店は海鮮居酒屋で、個室の掘り炬燵席だった。
「――私は、今だからちゃんと大人として向き合えると思ったのにですね……無視ってあり得なくないですか!?」
酒が進み理央は多弁になっていて、そんな姿を伊佐美は愉快そうに宥める。
「驚いただけじゃないの?」
「私も初めはそう思いましたよ?でも業務外で声かけようとすると避けるんですよ。いい歳した奴が、なんだって話ですよ!!」
「そうだよな。佐山はキーホルダー投げつけたこと謝りたいだけだもんな」
「それです!!そりゃ運命かもって思ったりしましたけど、まずは昔みたいに戻りたいだけなのに警戒しすぎかって……スパダリだかなんだか知りませんけどぉ、伊佐美さんの方が余裕あるし、よっぽどスパダリですよ!」
零士の人気っぷりは正直なところ面白くはない。
こういうのを過去の栄光と呼ばれるのかもしれないが、理央は零士のダメなところをいくつも知っている。
他人の機微に疎いところ、特に女相手には鈍感すぎるところ、朝が弱いところ、真剣な顔は決まって上の空になりがちなところ、偏食で茹でた野菜は絶対食べないところ、などなど。
そんな”自分だけが知っているはず”の零士の姿を思い浮かべていると、伊佐美が海老の唐揚げを突きながら大袈裟に言った。
「えー、いいの?俺の方がいい男なんて言っちゃって」
本気でない時の演技じみた言い方に理央は現実に引き戻されて、それから真剣に頷いた。
「いいんです。実際素敵ですもん。伊佐美さんは私の憧れですから。みんな分かってませんよね」
これは本当なのだ。
理央にとって伊佐美は憧れ。
酔いも混じって唐突に力説したくなってくる。
「――私は、今だからちゃんと大人として向き合えると思ったのにですね……無視ってあり得なくないですか!?」
酒が進み理央は多弁になっていて、そんな姿を伊佐美は愉快そうに宥める。
「驚いただけじゃないの?」
「私も初めはそう思いましたよ?でも業務外で声かけようとすると避けるんですよ。いい歳した奴が、なんだって話ですよ!!」
「そうだよな。佐山はキーホルダー投げつけたこと謝りたいだけだもんな」
「それです!!そりゃ運命かもって思ったりしましたけど、まずは昔みたいに戻りたいだけなのに警戒しすぎかって……スパダリだかなんだか知りませんけどぉ、伊佐美さんの方が余裕あるし、よっぽどスパダリですよ!」
零士の人気っぷりは正直なところ面白くはない。
こういうのを過去の栄光と呼ばれるのかもしれないが、理央は零士のダメなところをいくつも知っている。
他人の機微に疎いところ、特に女相手には鈍感すぎるところ、朝が弱いところ、真剣な顔は決まって上の空になりがちなところ、偏食で茹でた野菜は絶対食べないところ、などなど。
そんな”自分だけが知っているはず”の零士の姿を思い浮かべていると、伊佐美が海老の唐揚げを突きながら大袈裟に言った。
「えー、いいの?俺の方がいい男なんて言っちゃって」
本気でない時の演技じみた言い方に理央は現実に引き戻されて、それから真剣に頷いた。
「いいんです。実際素敵ですもん。伊佐美さんは私の憧れですから。みんな分かってませんよね」
これは本当なのだ。
理央にとって伊佐美は憧れ。
酔いも混じって唐突に力説したくなってくる。



