絶対に好きになってはいけない人

それから、数年の月日が流れた――。

「……ねえ、いつまでそんな子ども扱いする気?」

低く、けれどどこか甘さを孕んだ声に、私はハッと現実に引き戻された。
気づけば、私はすっかり大人になった美飛の腕の中に閉じ込められていた。

いつの間にか、私よりもずっと背が高くなった美飛。あの頃「中2の可愛い弟」だった彼は、すっかり男の顔をして、私の顎をクイッと持ち上げている。

「み、美飛……? あなた、いつの間にそんなに……」

「ずっとだよ。昔から、ずっとお姉ちゃんたちのことだけを見てた」

美飛はふっと意地悪く笑うと、私の耳元に唇を寄せた。

「昔は『絶対に好きになってはいけない人』だったかもしれないけどさ。……もう、我慢しなくていいよね?」

かつて画面の向こうの「推し」だった彼は、今や私を狂わせる、たった一人の特別な男性になっていた。
――あの日から始まった私たちの予測不能な同居生活は、こうして、完全に私の負け(両想い)で幕を閉じるのであった。