溺愛なんて、お断りしますっ!

少し。
 その言葉だけで、みのりはじわっと不安になった。

 もともと狭い場所は少し苦手だ。
 でも泣くほどじゃない。たぶん。おそらく。できれば早く出たいけど。

「顔、青い」

「だ、大丈夫ですっ」

「見えないけど」

「見えなくても大丈夫ですっ」

 強がって返したものの、自分でも声が少し震えているのがわかる。
 うぅ、かっこ悪い。社会人初日なのに。

 すると、目の前にペットボトルが差し出された。

「飲めば」

「えっ、あ、ありがとうございます……!」

 みのりはぱっと顔を上げた。
 やっぱりこの人、ちょっと優しいのかもしれない。

 受け取ってひと口飲むと、少しだけ落ち着いた気がした。
 優しい人だなあ。
 ちょっと言い方が冷たいだけで、きっと本当は親切な人なんだろう。

「落ち着いた?」

「はい、たぶん!」

「たぶんって」

「えへへ……」

 乾いた笑いが漏れる。
 でも、さっきよりはちゃんと息ができる。

 その時、また小さく箱が揺れた。

「きゃっ」

 バランスを崩しかけたみのりの腕を、相手がぐいっと引く。
 気づけば、驚くほど近い距離にいた。

「危ない」

「わっ、ご、ごめんなさい!」

「謝らなくていいから、ちゃんと立って」

「は、はいっ」

 みのりは慌てて壁に手をつく。
 近かった。びっくりした。
 でもきっと、こういうのって非常時だから普通なんだろう。うん、普通普通。助けてもらっただけだし。