溺愛なんて、お断りしますっ!

緊張しないほうが無理だった。

 みのりは昔から、人の前に立つより、誰かを支えるほうが好きだった。

 高校の文化祭でもそうだった。
 表に立つ友達より先に会場に入って、足りないものを確認して、忘れ物を取りに走って、うまくいくように裏から動く。
 誰かが笑ってくれるのを見るのが好きで、頑張っている人が報われる瞬間を見ると、自分のことみたいにうれしくなった。

 きっかけは、三年の春だった。

 友達に誘われて行った、小さなライブ。
 まだ今みたいに大きくない会場で、照明も演出も決して派手ではなかったけれど、ステージの上の男の子たちは、びっくりするくらいまっすぐ前を向いていた。

 汗だくで、それでも笑って、最後まで全力で歌っていた。

 その帰り道、みのりはずっと考えていた。
 どうしてあんなふうに誰かを輝かせられるんだろう。
 どうして見ている人まで元気にできるんだろう。

 そして気づいたのだ。
 ステージの上だけじゃなくて、その裏にも、きっとたくさんの人の頑張りがあるのだと。

 衣装を整える人。
 時間を管理する人。
 体調を気にかける人。
 不安な時に背中を押す人。

 そういう人になりたいと思った。

 誰かの夢のすぐそばで、その夢を守れる人に。

 だから大学でもマネジメントを学んで、アルバイトも掛け持ちして、転びそうになりながら就活をして、なんとかこの事務所に入ったのだ。