「氷の天才外科医の激甘な課題添削」 冷徹な外科部長は難攻不落の愛し君だけに甘く狂う

桐生は冷やかな仮面を被り直し、腕を組んで彼女を見下ろした。

​「桜井。昨夜のレポート、確認しておいた。俺のデスクではなく、君のファイルボックスに戻しておいたからな」

​「あ……ありがとうございます。お忙しい中、ご指導いただき感謝いたします」

​「礼などいい。……内容については、言いたいことが山ほどある。始業前の15分間、カンファレンスルームで補足指導を行う。来なさい」

​「はい、承知いたしました」

​凛の瞳には、一切の嫌がる素振りも、感情の揺らぎもなかった。

ただひたすらに、「指導医からの指示を受け止める」というプロとしての直真な光だけが宿っている。

​去っていく凛の小さな背中を見つめながら、桐生は胸の奥が締め付けられるような激しい痛みに襲われた。

​(……何故だ。何故これほど近くにいるのに、君の心は遠い。俺のすべてを注ぎ込んでも、その鉄壁の鎧は1枚すら剥がれてくれないのか――)