天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない

「杏ちゃんは、学童行ってた?」



久保田先輩も、律くんと同じく、急に話が変わるな。

こういう兄弟なのかな?



「……はい」



質問の意図がわからなかったけど、返事をした。

学童では、本を読んだり、友達とおしゃべりしたり、だらだらと楽しくすごしていたな。



「俺、苦手だったんだ。半年くらいはがんばったんだけど、学校まで行けなくなっちゃって」



こんなにコミュ力の塊(かたまり)のような人なのに、そういうこともあるのか。

でも、気をつかう人っぽいから、疲れてしまうのかもしれない。



「そしたら、ばあちゃんが『放課後は、マリーにおいで』って言ってくれて。学校が終わったら毎日マリーですごしてた」



昔を思い出して少し悲しそうな久保田先輩の顔を見て、昨日、断ってしまったことが申し訳なくなる。



「ばあちゃんが老人ホームに入るから閉店したときも寂しかったけど、取り壊されるのはそれ以上に寂しくなってて」

「……」



良心というものが、ちくちくと痛む。



「ここ最近、ずっと落ち込んでたから、律がお祭りで一日だけ復活させようって言ってくれて、いい案だなって思ったんだけど。巻き込んでごめんね」



胸が痛い……。これ、将来、閻魔(えんま)様に裁(さば)かれるやつじゃない?



「……誰か別の人に頼んだ方が」

「嫌だ。あのオムライスがいい」