天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない

シャーペンを差し出してきたのは、1学年下の律(りつ)くん。ものすごく、むすっとした顔をしている。



「学年トップのシャーペン」

「え?」



1学期の期末テストで学年トップを取ったことは、律くんから聞いて知っている。

でも、それと私のテストに、何の関係があるのだろう?



「俺のと交換しよ。兄ちゃんのより縁起いいって」

「律、杏ちゃんに勉強を教えてるのは俺だよ?」

「それが? 兄ちゃんは期末は学年何番だったんだよ」

「ここで順位なんて関係なくない?」

「関係ある! 俺はこれで年齢のハンデを埋める」

「追い越せると思わない方がいいよ。絶対に負けないし」

「いいや、俺が絶対に勝つ」



二人が、またケンカを始めてしまった。

最近よく見る光景。

こういうときは、さっさと帰る一択。

教科書を閉じてバッグの中に入れる。

ローテーブルから立ち上がりかけたとき、二人の視線が一斉にこちらを向いた。



「杏ちゃん」

「杏」



シャーペンが2本差し出される。



「「どっち使う?」」

「え……」



これは、どちらかを選ばないといけないやつなの?

っていうか、なんで私はこんなに緊張してるの?



――半年前まで、顔も知らない二人だったのに。