好きな男の子が幽霊になって会いに来た話。

……いない。

要くんどころか、人影はひとつもない。

街灯の下に伸びるのは、自分の影だけ。

「……はぁ」

小さく、ため息をつき、前に向き直る。

……幻聴だ。

今のは、きっと。

そうやって自分に言い聞かせるのは、もう、慣れた。

再び、一歩を踏み出そうとした、その時。

――視界の先。

数メートル先に、誰かが、立っているのが見えた。

……え?

今さっきまで。

本当に、誰も、いなかったはずなのに。

街灯の光の中に、一人分の影が、確かにある。

不思議に思いながら、ゆっくりと、近づく。

心臓の音が、耳の奥で、うるさくなる。

距離が、縮まって。

その人が、こちらを振り返った。