好きな男の子が幽霊になって会いに来た話。

焼香の順番を待つ間、鼻腔をくすぐるのは、線香の匂いと、濃い花の

香りが混ざり合った、独特の空気だった。

甘ったるくて、少し息苦しい。

肺の奥まで入り込んでくるみたいで、何度か、無意識に

浅く息を吸っていた。

ぼんやりと、前を見る。

遺影と、その周りを埋め尽くすほどの花束。

白や、紫や、淡いピンク。

数え切れないほどの花に囲まれて、

要くんは、いつも通りの笑顔を浮かべている。

……要くんって、お花好きだったっけ。

そんな、どうでもいいことが頭をよぎる。

気づけば、もうすぐ前だった。

名前を呼ばれ、立ち上がる。

あっという間に、私の番が来る。

教えられた通りに一礼して、進んで、香をつまんで。

ぎこちない動きでも、順番通りにこなしていく。

失敗もしなかった。

手が震えることも、なかった。

そのまま、何事もなかったみたいに、終える。