溺愛王子と秘密の同居

「おまえさ」

「……な、に」

「るいにキスされて、少しでも嬉しかった?」

 息が止まりそうになる。
 そんなこと、考える余裕なんてなかった。
 ただ驚いて、恥ずかしくて、どうしていいかわからなくて。

「……わかんない」

 やっとそれだけ答えると、玲央の目が揺れた。

「わかんない?」

「だって、ほんとに急だったし……」

「じゃあ俺なら」

「え……?」

「俺がしたら、どうすんの」

 今度こそ、心臓が止まるかと思った。

 俺がしたら。
 その言葉の意味を考えた瞬間、顔中が熱くなる。

「な、なに言ってるの……!」

「質問してるだけ」

「全然だけじゃないし!」

 わたしが真っ赤になって抗議すると、玲央はふっと笑った。
 でもその笑い方も、いつもの余裕のある感じとは少し違う。

「……だよな」

「え?」

「そんな顔されるなら、今はやめとく」

「い、今はって何!?」

「そのまんま」

 玲央は少しだけ身体を離した。
 ようやく空気が入ってくるのに、胸の苦しさは全然消えない。

「とにかく」

 玲央がいつものぶっきらぼうな声に戻る。

「次から、るいにも気ぃつけろ」

「……うん」

「優しい顔して近づいてくるやつほど、危ないから」

「それ、るいのこと悪く言ってる?」

「事実だろ」

 玲央の言葉に、思わず少しだけ笑ってしまう。
 すると玲央は目を細めた。

「なんで笑うんだよ」

「だって、嫉妬してるみたい」

 口にした瞬間、しまったと思った。
 でも玲央は否定しなかった。

 ただ少しだけ視線をそらして、低く言う。

「……してるよ」

「っ……」

「悪いか」

 悪いわけ、ない。
 むしろそんなふうに言われたら、胸がいっぱいで何も返せない。

 わたしが黙ったままでいると、玲央は小さくため息をついた。

「ほら、行くぞ」

「え?」

「昼飯」

「あ……うん」

 玲央はそう言って、わたしの手首じゃなく、今度は指先を軽くつかんだ。