溺愛王子と秘密の同居

「れ、玲央……」

「おまえ」

 低い声が落ちる。
 顔を上げると、玲央は思った以上に真剣な目でこっちを見ていた。

「なんで黙ってんだよ」

「え……?」

「るいにあんなことされて」

 一気に頬が熱くなる。
 あんなこと。
 その言い方だけで、さっきの感触まで思い出してしまいそうで困る。

「だ、だって、急だったし……!」

「嫌なら避けろ」

「そんなの無理だったの!」

「なんで」

「なんでって……!」

 言葉につまる。
 だって、るいはふわふわ笑って近づいてきて、気づいたときにはもう遅くて。
 嫌とか嫌じゃないとか考える前に、ただびっくりして固まってしまっただけだ。

「こわかったのか」

「こわいっていうか……」

 玲央の目が少しだけ細くなる。
 わたしは視線を泳がせながら、しぼり出すように答えた。

「びっくりした……」

「それだけ?」

「それだけって……」

 玲央の言い方が、なんだか妙に引っかかる。
 その目は怒っているようにも見えるし、でもそれだけじゃない気もする。

「玲央、なんでそんな怒ってるの」

「怒ってねーよ」

「怒ってるよ!」

「……おまえが鈍すぎるだけだろ」

「な、なにそれ」

 むっとして言い返すと、玲央は小さく舌打ちみたいに息をついた。

「るいがおまえに何したかわかってんのか」

「わ、わかってるよ! ほっぺにキスされたんでしょ……!」

 自分で言った瞬間、また恥ずかしくなって語尾がしぼむ。
 玲央はそんなわたしを見て、なぜかさらに機嫌が悪くなったみたいだった。

「軽く言うな」

「軽くなんて言ってない!」

「言ってるだろ」

 玲央が一歩近づく。
 また距離が縮まって、背中がぞくっとした。

「おまえ、それ誰にでもされていいことだと思ってんの」

「思ってないよ……!」

「じゃあ、もっと警戒しろ」

 その言葉に、胸がきゅっとする。
 怒られてる。
 でも、それだけじゃない。