溺愛王子と秘密の同居

「来てくれる?」

「う、うん」

 断れるわけがない。
 だって、朝のことも少し気になってたし。

 るいに連れられて廊下を歩きながら、わたしはちらっと横顔を見る。

「……るい」

「ん?」

「朝のこと、怒ってる?」

 るいは一瞬だけ目を丸くして、それからくすっと笑った。

「怒ってないよ」

「ほんとに?」

「ほんと」

 そう言うわりに、笑い方が少しだけ切ない。

 胸がきゅっとして、思わず足を止める。

「でも、なんか元気ない気がする」

「……りんくんって、やさしいね」

 るいが立ち止まって振り返る。
 その目がやわらかくて、でも少しだけいたずらっぽく揺れた。

「そういうとこ、ずるいなあ」

「え?」

「俺、朝ちょっとだけ拗ねてたんだ」

 正直に言われて、わたしは目をぱちぱちさせた。

「やっぱり……」

「だって玲央くんばっかり、りんくんの特別みたいだったから」

「特別って……」

 その言葉にまた胸がざわつく。
 玲央のことを考えそうになって、あわてて気持ちを追い払った。

 るいはわたしに少し近づいて、ふわっと笑う。

「でも、りんくんが俺のこと気にしてくれたなら、ちょっとうれしい」

「それは、だって……」

「じゃあ、お詫びして」

「えっ」

「俺のこと、ちゃんと見て?」

 そんなこと言いながら、るいが顔をのぞきこんでくる。
 距離が近くて、思わず後ずさりそうになる。

「る、るい、近いよ」

「だめ?」

「だめっていうか……びっくりする……」

「ふふ、りんくんほんとかわいい」

 そう言って、るいは指先でわたしの頬にそっと触れた。